先日、2008年に新築をさせていただきました江東区お客様、T様のお住まいにお邪魔させていただきました。
こちらのお客様は、大工さんが建てた家にこだわっておられ、工務店をインターネットでお探しで、私どもにご相談をくださいました。
そしてご希望の通り、国産の自然の木を沢山使ったまさに「ロハスな家」が完成したのです。
お暮らしになって、既に4年、真新しかった木は少しつづ深い色合いになり、完成時よりも更に味わいを増したようでした。
とても大事に暮らされており、お伺いするといつも歓待してくださいます。
先日お伺いした際は、新築時の思い出や、今の暮らしぶりをインタビューさせていただいたのですが、快く様々なことをお聞かせくださいました。ありがたいことです。
当時の資料や、お客様ご自身が造られた建物全体の模型(プロ顔負けの素晴らしい出来でした!)、担当したコーディネーターが作った思い出アルバムなどを今でも大切に保管されていて、嬉しそうに見せてくださいました。
インタビューの様子は、後日お伝えする予定です。
ありがとうございました。
■「さくりはめ」の構造壁
構造用合板を面で打ち付けるやり方ではなく、柱にミゾを付け、板を落とし込む事を「さくりはめ」と呼びます。
柱に溝をつくり、その中へパネルを上から落とし込むやり方は、他に類を見ない工法でありその成果もはっきり体感できるものです。
一般的な構造用合板を打ち付ける方法とは明らかに耐力が違います。
地震力が働いた場合、針が飛び、面材が働きを無くしても、溝の中で粘りを発揮します。
建物倒壊防止装置としての働きのある「さくりはめ」工法は、日本古来からある地震のエネルギーを吸収する伝統工法のような働きを持っています。
こちらのお住まいでも「さくりはめ」を採用しました。
パネルは、断熱材と一体化したものです。
厚さ45mmの高性能ウレタンフォームに、30mmのムクボードを張ったものです。
今から数年前、「外断熱」「家断熱」と、どちらが良いのかという論争がありました。
私は、どちらも施工したことがありますが、どちらも優劣つけがたいものがあります。
きちんとした施工を行えば、どちらもその効果は発揮できるのです。
こちらの住宅の場合は、内張断熱の一種ですが、隙間係数はきわめて高い数値が出ます。
こちらのお宅は2階の傾斜した屋根が特徴ですが、これは北側斜線という規制によります。
北側斜線とは、北側隣地の日照環境の確保を図るための規定です。
北側の隣家の境に近づけば近づくほど、高さの規制が厳しくなってしまうのですが、お客様は、土地の南側に、日当たりの良いお庭を確保したい、というご希望がありました。
そこで、家を北側に寄せつつ、規制をクリアする方法として、写真のように梁を斜めにかける「登り梁工法」という方法をとりました。
北側の高さがクリアでき、かつ、天井も高く取れましたので、広さを感じる仕上がりになりました。このような天井の場合、気になるのは断熱(吹き抜けの天井は直射日光の影響を大きく受けるため)ですが、きちんとした施工で、断熱効果も高いお住まいになっています。
完成時は夏でした。その際、気密や気温を測定をしましたが、安心の結果が出ています。
今回ご紹介させていただくのは、こちらの事例のお客様です。
こちらの住宅を一言で表すなら「シンプル」です。
単純な中にも整合された美しさのようなものを持っています。
表題にもあるように、こちらのお宅では小さなお子さんが二人いらっしゃいました。
お子さんが小さいので、またご家族で川の字で寝られるということでしたので、最初から小さく部屋を区切るよりは、
大きなスペースでご家族がのびのび生活ができるようなお住まいにさせていただきたい、という想いがありました。
そして、こちらのようなお住まいが出来上がりました。
【2階】
【1階】
住宅の形態でいえば、1LDKかもしれません。
何せ2階大きな部屋が1つで、1階は水廻りとリビングだけというシンプルさです。
この大空間を可能にしたのは、ロケット工法と言われる特殊な工法にあります。
ロケット工法の中でもこちらの住宅はTERRA工法(テラ工法)という、
ロケット金物で接合した軸組みと専用無垢断熱パネルとの組合せによる特殊なシステム工法です。
静岡県浜松市にある日東木材さん(現ハイビック浜松株式会社さん)の会長さんと親しくさせていただいた関係もあり、
しっかりとした工法は、大工出身の私や父を納得させるものでした。
今では在来でもパネル工法が行われておりますが、当時、断熱材+無垢パネルは非常に珍しい工法でした。
今でも特許工法であり、日本で唯一それが可能なのが、ロケット工法なのです。
残念ながら私どもでは現在取り扱っていませんが、再びやってみたい工法の一つです。
前回のエントリー、「柱や梁が見える真壁の家」の続きです。
★内装材も自然素材でこだわる
住宅の中で大きな部分を占める壁や天井ですが、こちらは火山灰から抽出した「アッシュライト」という新しい壁材を使用しました。
壁も真壁工法のため910ピッチで柱を入れるようにし、後々のメンテナンスにも対応できるようにしました。
床はヒノキの無垢フローリングを採用しました。
コストダウンを図る為、等級的にはあまり高いものにはしませんでしたが、きちんとした塗装で仕上げ、将来のメンテナンスに対応できるようにしました。
★将来を見据えた間取りの工夫
こちらのお宅はお二人のお子様がいらっしゃいます。
将来の家族の形の変化に対応するために、2階は出来る限りオープンなスペースとしています。
あえて間仕切りを作ることはせず、大きなクローゼットで間仕切りを行い、将来、子供部屋が必要になった時に活躍してくれるはずです。
写真右側と左奥にあるクローゼットは、シナランバーで作成し、梁下寸法にぴったりと納まるようになっています。
寸法ぴったりなので、場所を変えたくなった時にどこの下に運んでもピッタリはまる、というアイディアです。
容量も、押入れ一間分とたっぷり入ります。
こちらのお宅は、育ち盛りのお子さんがいらっしゃる、お若いご夫婦でした。
自然素材にとても造詣が深く、インターネットで検索してくださり、私どもで新居を建てさせていただきました。
予算も限られていたるため、様々な工夫を施しました。
設計の担当といくつかのルールを決めました。
【1】出来るだけシンプルな設計
【2】自然素材を多用する
【3】何十年経っても飽きの来ないデザイン
これら一つ一つを検証し、施工図を起こしながら、私どもの標準の仕様にするべく
お客様と設計と私とで、一緒に造り上げました。
★デザイン
デザインは、シンプルな中にも飽きの来ないスタイルとするために、日本家屋本来のもつデザインを多用しています。
こちらのお宅では「真壁工法」を採用しています。
真壁工法は今ではあまり見られなくなってしまいましたが、少し前の日本家屋では当たり前の工法でした。
架構計画も、全て一本の大黒柱を中心とし、そこから派生する統一した寸法の梁を使用することにより、デザイン的にも構造的にも優れた住宅となっています。
また、「杉」をデザインのキーとしました。
構造材は、紀州の杉(60年)を採用しています。
目が詰まり、色目もきれいな紀州の材は構造的にも優れています。
梁を隠さず「現し」にして仕上げるので、和歌山の工場と連絡を取り、見た目も美しい材をと厳選いたしました。
構造材もそうですが、建具も岩手の遠野という所から直接仕入れています。
★コストダウンを図る為に
基本モジュールを限定させ、部材の寸法や材料を統一させたこと、また、仕上げ材としてはあまり利用されない杉の下地板(厚さ15mm)なども、あえて現し(見える状態)にすることでコストダウンに一役買っています。
紀州材にこだわったお宅、最後は外側のご紹介です。
屋根には、軽くて丈夫、そしてほぼメンテナンスフリーのガルバリウム鋼板を使用しています。
特に注目なのは、外壁です!
こちらのお宅の外壁には、昭和電工社製の「ラムダ」を使用しました。
ラムダはかなり優れもので、見た目は普通のサイディングと変わらないのですが、
コンクリートと同等の、高い性能を持っているのがすごいところなのです。
防火性、断熱性もさることながら、雨に対しての「水密性」もピカ一!です。
素地のラムダと、アクセントの杉材がとてもよくマッチした仕上がりになりました。
こちらの木材には、防火処置をしています。メンテナンスの必要が出てきてしまいますが、
やはり、雰囲気がありますね。
>>紀州材の家、完成写真一覧はこちらで紹介しています。合わせてご覧ください!
家の中だけでなく外まで細かくこだわったこちらのお宅。
打ち合わせもかなり密だったことを思い出します。
お客様と夜中になるまで打ち合わせたこともしばしば・・・
それだけに出来上がったときは感無量でした!
前回のエントリーと同じ、紀州材にこだわったお宅の完成時の写真より一枚。オリジナルのキッチンです。